1980年代中頃...
『世は大レーサーレプリカ時代!!』
各社がレースで得た技術の粋をありったけ詰め込んだキチガイバイクを投入、まさに『デカくて速いやつが偉い。』という時代であった。さらにバブルであったことや様々なバイクに関する作品がメディアなどで取り上げられ、またバイクのレース自体にも関心が集まっていた時代であった。(らしい。)
その中で産声を上げたのがSRXというバイクなのだが...
「明らかにレプリカでもないし...速そうでもない..」
「SSだから一応..スーパースポーツかな!?あ、スーパーシングルっすか...」
「まぁでもエンジンの造形、限りなく絞り込まれたフォルム、珍しいショートマフラーにマスの集中が図られたボディはエッチだ...」
「え、始動はキックオンリーなんすね...」
といった感想を納車前にいろいろ調べながら私は抱いていた。
なぜこのような時代の流れに逆らうようなバイクが生まれてしまったのか、いくつかの記事をもとにまとめていきたい。
時代背景
第一に大切なのはやはり時代背景であると思う。バブルも相まってバイクブームの真っただ中...それにある種嫌気がさした開発者たちが生み出したのがSRXである。
簡単に言えばバイクにわかを嫌うおっさんたちが
「シングルが至高」「カウルは糞」「女性?別に乗らなくていいよ」「キックでエンジンかけられないやつはバイク乗んな」「くたばれ、お気楽パコーン!」
といったような今Twitterで言ったら炎上レベルかもしれない共通認識のもと開発された...んだがやはりこれは今より開発にリソースを回せたからこそであると思う...
今やバイク市場は縮小し続けており、最盛期の1/6、1/10とも言われている。やはり加熱したバイクブームの反動による3ない運動やバイク業界自体の政治力のなさ、環境、騒音問題など様々な原因があるだろうが、仮にこのような現状でエンジニアたちが「こういうバイクを作りたい!」となっても果たして具現化するかは素人からしても甚だ疑問に思うところだ。
といったことからいわばSRXは時代の申し子というか「バブルの産物」であることは間違いない。珍車旧車マイナー車おぢさんは「○○を今出してればなぁ~」などと宣うが、果たしてそれはどうなのかなという疑念はいつも抱いている。あの時代だからこそ生まれたバイク、コンセプトというものはあるのではないだろうか。
あと個人的に最近のネオクラシックブームやkawasakiがZを。SUZUKIが刀を復刻させたりしている動きはいいよなぁと思っている。リターンライダー向けでもなんでも新しいバイクがいっぱい出るってことは見ていて楽しいから...
開発経緯
以上、時代背景について述べてきたが、ここからは開発自体を掘り下げてみていきたい。よくSRXはSRの兄弟分みたいなニュアンスで認識されてる事が多いが、あながち間違いでもないと私は思う。開発思想からすると別物であることには間違いないのだが、元のエンジンはSRXはXT600・XT400、SRはXT500となっている。「腹違いの兄弟」とでもいった方が...余計分かりづらい気もするが...。(ここら辺の表現が某ブログとほぼ一緒でした。反省しております。)まぁ従兄弟くらいがいいとこかもしれない。
またSRX自体、SRの後継機として開発されたという面でもある種血のつながりはあるいえるだろう。SR家(XT500家系)の後継ぎとして従兄弟のSRX(XT600家系)が推薦されたが結局本家SRが後継問題に勝利した...といった具合であろうか...(ますます訳が分からない)
『エンジンはかつてXT500からSR500&400が生まれたように、XT600のエンジンを元にした。YDISという強制開閉&負圧サーボを組み合わせたデュアルキャブで扱いやすさと充実のトルクを両立。フレームは角型鋼管を使ったクレードルタイプ。スタイルも新しかった。スリムで都会的なデザインとは、SRXのためにあったようだった。速度計を車体中央に置いた上で小径のエンジン回転計をオフセット配置してシンプル感にアシンメトリー感を加える。燃料タンク下部の接合部=フランジを外から見えないように処理する。30年後の今を先取りしたかのようなスーパーショートマフラーは、確かに新しさの象徴だった。このように繊細な配慮を各所に施して、デザイン性を高めたのだ』
(ヤマハ SRX600 / 400(1985) 絶版ミドルバイク-バイクブロスより引用)
参考記事に置いている開発者インタビューの記事を見てもらえばわかるが、非常に強いこだわりをもってこのバイクを開発していたことが伺える。GKデザイン所属の一条氏と車体設計側の吉田・一木氏とのせめぎ合いなど特に面白い。ただ非常に高いデザインと走行性能を兼ね備えたバイクではあるが、例えばメーター周り、スピードメーターは一体感のある作りになっているがタコメーターはあからさまに「付け加えた感」が否めない。
さらにこれは初期型のSRX4のみであるが、ダブルディスクのSRX6の部品を流用しているために右側のフロントフォークが...少し残念なことになっている。ライセンスホルダーを二つつけるのかな...?
またインタビューで
『吉田:新しく出てくるバイクはどれもこれも大きなカウリングに囲まれて、「これじゃライダーが手を入れられないじゃないか。本来バイクはもっとシンプルなものだ」と。』
と、述べているがマスの集中化によりデザイン性が増した分、プラグへのアクセス等の整備性の低下を招いている。おそらくタコメーターはデザイン側と設計側、もしくは営業側との妥協点であったのかもしれないし、マスの集中化と整備性の低下はトレードオフの関係にあるためやむを得ないともいえる。ただまぁネイキッドなのでそこまで憂慮することでもないのも確かだが...
重箱の隅をつつくのはこのあたりににしておいて、結果的にSRXは好調なセールスを記録した。初期型、Ⅱ型Ⅲ型、そして大きくモデルチェンジして...85年から91年まで、およそ6年間で5万台弱を売り上げた模様。カスタムパーツや中古車もまだまだ出てる当たりどこかのSRV250とは大違い...
終わりに
とまぁいろいろ書いてきたが、書いてる途中で目に入った
決して多くない人たちへ SRX400/SRX600(1JK/1JL~)|系譜の外側
という記事が完全に上位互換すぎて少し書くのが億劫になってしまった...
参考記事にいろいろ置いておくので暇な人は見てほしい。
参考記事
2輪市場への挑戦状!?時代に逆行するバイク、ヤマハSRX400/600とは? | Motorz -クルマ・バイクをもっと楽しくするメディア-
ヤマハ SRX600 / 400(1985) 絶版ミドルバイク-バイクブロス